証券口座の乗っ取りを防ぐには|被害の状況、パスキーなどの対策、補償はどうなる?
2025年、ネット証券の口座が乗っ取られ、勝手に株を売買される被害が急増しました。金融庁の統計では、2025年1月から2026年9月までに、不正アクセスは1万9,252件、不正取引は1万642件にのぼります。
被害はどの証券会社でも起こりうる、と金融庁は注意を呼びかけています。手口と、いますぐできる対策、乗っ取られたときの補償をまとめました。内容は2026年10月12日に金融庁・各社の公式ページで確かめたものです。
結論:パスキーを設定し、リンクからログインしない
- パスキー(顔認証・指紋認証)や多要素認証を設定する:ログイン・出金・出金先の口座の変更のときに使えるものは、すべて有効にする
- メールやSMSのリンクから開かない:証券会社のサイトは、ブックマークか公式アプリから開く
- パスワードを使い回さない:長く、推測されにくいものにする
- 通知を受け取り、こまめに口座を確かめる:身に覚えのないログインや取引があれば、すぐ証券会社に連絡する
補償は「必ず全額」ではありません。大手10社は被害を補償する方針を申し合わせましたが、額は利用者の管理の状況などで個別に決まります。
被害の状況:ピークの2025年4月は不正取引3,033件
| 不正アクセス | 不正取引 | 不正取引があった証券会社 | |
|---|---|---|---|
| 2025年4月(ピーク) | 5,490件 | 3,033件 | 16社 |
| 2025年12月 | 382件 | 116件 | 7社 |
| 2026年6月 | 171件 | 104件 | 8社 |
| 2026年9月 | 37件 | 2件 | 2社 |
| 合計(2025年1月〜2026年9月) | 1万9,252件 | 1万642件 | — |
不正取引による売却は合計で約4,372億円、買付は約3,837億円です。2026年に入って件数は大きく減りましたが、ゼロにはなっていません。
参考:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」(2026年10月9日更新。数値は証券会社からの報告にもとづく暫定値)
手口:偽サイトでIDを盗み、株を売って小型株を買う
金融庁によると、多くの手口は、実在する証券会社を装った偽のサイト(フィッシングサイト)でIDやパスワードを盗み、口座に勝手にログインして、持っている株などを売り、その代金で国内外の小型株を買うというものです。お金を引き出すのではなく、口座の中の資産を値下がりしやすい株に入れ替えられてしまいます。
パソコンやスマホに入り込んだウイルス(マルウェア)で情報を盗まれることもあります。
いますぐできる対策
金融庁と日本証券業協会が呼びかけている対策です。
- パスキーなど、強い多要素認証を設定する:証券会社が用意しているセキュリティの機能(ログイン時・取引時・出金時・出金先の口座の変更時の多要素認証、通知サービス)は、すべて有効にします。いまは各社で、パスキー認証など、フィッシングに強い認証の必須化が進んでいます。使えるようになったら、すぐ設定しましょう
- メールやSMSのリンクを開かない:見覚えのある送信者からのメッセージでも、リンクからは開かない。証券会社のサイトは、正しいURLをブックマークしておき、ブックマークか公式アプリから開きます
- パスワードを使い回さない:パスワードを使う場合は、ほかのサービスと同じものにせず、できるだけ長く、推測されにくいものにします
- こまめに口座を確かめる:ログインや取引の通知を受け取り、身に覚えのないものがないか見ます
- パソコン・スマホを最新にする:OSやアプリを最新にし、ウイルス対策ソフトを入れておきます
パスキーとは:パスワードを入力しないログイン
パスキーは、スマホやパソコンの顔認証・指紋認証・画面ロックでログインするしくみです。パスワードを入力しないので、偽のサイトに入力して盗まれることがありません。
金融庁は2025年10月15日に監督指針を改正し、フィッシングに強い多要素認証の必須化を証券会社に求めました。実施は原則として2026年6月末までとされています。日本証券業協会も2025年にガイドラインを改正し、ログイン・出金・出金先の口座の変更のときに、パスキーなどのフィッシングに強い多要素認証を必須にしました。
参考:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」、金融庁「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点(日本証券業協会、2025年11月18日)」
乗っ取られたら補償される?
証券会社の約款は、IDやパスワードが盗まれたことによる損失には責任を負わない、としているのが一般的でした。しかし被害の急増を受けて、2025年5月2日、大手の証券会社とネット証券の10社が、被害を補償する方針を申し合わせました(日本証券業協会が公表)。
- 対象は、野村證券・大和証券・SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券・SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・三菱UFJ eスマート証券
- 補償の額は一律ではなく、被害の状況や利用者の管理の状況に応じて、各社が個別に決めます。たとえば楽天証券は「お客様個別の状況に応じて一定の被害補償を行う」としています
- 松井証券は、当初は一律に損失の2分の1を補償していましたが、2025年9月29日以降の被害は、利用者ごとの事情に応じて決めると改めました
- 松井証券は、個人が受け取る補償金は所得税がかからず、確定申告もいらないと案内しています
セキュリティの機能を設定していなかったなど、管理の状況によっては、補償が減ることもありえます。補償をあてにせず、まず被害にあわない対策をしておきましょう。
銀行の預金・ポイントとの違い
| 不正に使われたとき | |
|---|---|
| 銀行の預金 | 盗まれたり偽造されたりしたキャッシュカードの被害は、預金者保護法で補償される。盗まれた通帳やネットバンキングの被害も、全国銀行協会の申し合わせで、本人に過失がなければ原則補償 |
| 証券口座 | 大手10社が補償する方針を申し合わせた。額は個別の事情で決まる |
| ポイント | 規約で返さないとしていることが多い(楽天ポイントは、楽天に責任がある場合を除いて返さない) |
ポイントを乗っ取られたときの扱いと、ためこまずに使ったほうがいい理由は、こちらにまとめました。
関連記事ポイントは貯めるな、すぐ使え|ためこんでも得をしない理由と、ためておいていい例外ポイ活でたまったポイントは、ためこまずにすぐ使うのが正解です。ポイントはお金ではなく、会社の規約の範囲で使える権利にすぎません。期間限定ポイントの失効、規約の変更、退会や相続で消えること、乗っ取られても補償されないこと、利息がつかないことなど、ためこむと損をする理由と、dポイントの交換増量キャンペーン・WESTERポイントの特典きっぷ・ウエル活(WAON POINT)・ポイント運用など、ためておいてもいい例外を1級FPがまとめました。
参考:野村證券「今般のフィッシング詐欺による不正取引の被害補償について」、楽天証券「今般の不正取引被害に対する当社の補償方針について」、松井証券「フィッシング詐欺等による不正取引での被害に関する今後の補償について」、全国銀行協会「預金等の不正な払戻しへの対応」について
被害にあったら、すぐにやること
- 証券会社の問い合わせ窓口に連絡する:身に覚えのないログインや取引があったら、すぐに連絡します。窓口の番号は、メールやSMSに書かれたものではなく、公式サイトやカードで確かめます
- パスワードを変える:同じパスワードをほかのサービスで使っていたら、そちらも変えます
- 相談する:金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811、平日10時〜17時)に相談できます
補償の手続きをうたう詐欺や、証券会社・警察を名のるフィッシングもあります。連絡先は必ず自分で確かめましょう。
まとめ:パスキーを設定して、ブックマークから開く
- 証券口座の乗っ取りは、2025年1月から2026年9月までに不正取引1万642件。2026年は減ったが、まだ起きている
- 手口の多くは、偽のサイトでIDとパスワードを盗み、株を売って小型株を買うもの
- パスキーなどの強い多要素認証を設定し、ログイン・出金・出金先の変更のときの認証と通知をすべて有効にする
- メールやSMSのリンクから開かず、ブックマークか公式アプリから開く。パスワードは使い回さない
- 大手10社は被害を補償する方針だが、額は個別の事情で決まる。補償をあてにせず、まず対策を
- 被害にあったら、すぐ証券会社に連絡し、パスワードを変える。金融庁の相談室にも相談できる
※被害の件数・制度の内容は2026年10月12日時点の金融庁・各社の公式ページで確かめたものです。補償の方針は変わることがあります。個別の被害については、各証券会社の窓口にご相談ください。


