小規模企業共済とは?掛金は全額所得控除、掛金の範囲で借りられる経営者の退職金|iDeCoとの使い分け
小規模企業共済は、個人事業主や小さな会社の役員が、廃業や退職のときに受け取るお金を積み立てる制度です。国の機関の中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営していて、「経営者の退職金制度」と呼ばれています。
掛金が全額所得控除になるのはiDeCoと同じですが、大きく違うのは、積み立てた掛金の範囲でお金を借りられることです。iDeCoは60歳まで引き出せませんが、小規模企業共済は事業資金や生活資金が必要なときに借りて、あとで返せます。一方、iDeCoは投資信託で運用して増やせます。どちらが上というより、目的が違うので、両方の特徴を知って使い分けるのがおすすめです。
内容は2026年10月5日に中小機構のページで確認したものです。
小規模企業共済のしくみ
| 掛金 | 月1,000〜70,000円(500円単位)。加入後も増やしたり減らしたりできる |
|---|---|
| 税金 | 掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
| 借入れ | 掛金の7〜9割まで、一般貸付けは年1.5%・担保や保証人なし |
| 受け取るとき | 廃業・退職のとき(65歳以上・180か月以上払えば、仕事を続けたままでも) |
| 受け取り方 | 一括(退職所得)・分割(公的年金等の雑所得)・併用 |
加入できる人・できない人
加入できるのは、次の人です。
- 個人事業主:開業届を出して、事業所得で確定申告をしている人。士業(弁護士・税理士・行政書士など)や農業も入れます
- 個人事業の共同経営者:事業主1人につき2人まで
- 小さな会社の役員:商業登記簿に役員として登記されている人
いずれも、常時使用する従業員が20人以下(商業・宿泊業と娯楽業以外のサービス業は5人以下)の事業であることが条件です。従業員の数は加入するときの条件で、あとで増えても続けられます。
次のような人は加入できません。
- 会社員(給与所得者)が副業で事業をしている場合:アパート経営をしている会社員なども入れません
- 登記されていない相談役・顧問など
- 中小企業退職金共済(中退共)などに、従業員として入っている人
参考:中小機構「加入資格」
いざというときは、掛金の範囲で借りられる
小規模企業共済のいちばんの特徴は、契約者貸付です。12か月以上掛金を払うと、払った掛金をもとに決まる額まで借りられます。
| 借りられる額 | 掛金の範囲内(納付月数によって掛金の7〜9割)で、10万円以上2,000万円以内 |
|---|---|
| 利率(一般貸付け) | 年1.5%(災害・病気・創業・事業承継などの特別貸付けは年0.9%)。借入期間で利率は変わらない。利率は金利の情勢をふまえて中小機構が決めるので、今後変わることがある |
| 担保・保証人 | 不要 |
| 使い道 | 事業の運転資金のほか、生活資金にも使える |
| 借入期間 | 6か月・12か月(一括返済)。額が大きければ24・36・60か月(6か月ごとの分割返済)も選べる |
借りられる額は年2回(4月・10月)に見直されます。借りているあいだも、掛金は積み立てられたままで、所得控除も受け続けられます。
iDeCoは、どんなにお金が必要になっても60歳まで引き出せません。小規模企業共済なら、売上が落ちた月や大きな支払いがあるときに、積み立てたお金を担保に、低い金利で借りてしのげます。そのぶん、掛金を多めにしても安心です。
ただし、返済が遅れると年14.6%の延滞利子がかかります。返さないまま1年たつと、掛金から差し引かれます。借りるのは、返せる見通しがあるときにとどめます。
受け取るときの税金
受け取るときの税金は、受け取り方と理由で変わります。
| 受け取り方 | 税金の扱い |
|---|---|
| 共済金(廃業・退職など)を一括で | 退職所得 |
| 共済金を分割で(60歳以上・300万円以上などの条件あり) | 公的年金等の雑所得 |
| 65歳以上で任意に解約 | 退職所得 |
| 65歳未満で任意に解約 | 一時所得 |
退職所得は、退職所得控除を引いた残りの2分の1だけに税金がかかるので、かなり軽くなります。掛けるときに所得控除を受けて、受け取るときも軽い税金で済む、というのがこの制度の強みです。
なお、共済金も退職所得なので、iDeCoの一時金や会社の退職金と受け取る年が近いと、退職所得控除が減ることがあります。受け取る順番と間隔のルールは、iDeCoの記事にまとめています。
関連記事iDeCoの改正まとめ|2026年12月から掛金の上限が月6.2万円に、受け取りは「5年ルール」が「10年ルール」に2026年12月の掛金から、iDeCoの拠出限度額が上がります。企業年金がない会社員は月2.3万円から6.2万円に、自営業は7.5万円に。70歳まで加入できるようにもなります。増やしたときに税金がいくら減るか、掛金を増やす手続き(年1回の制限の例外、e-iDeCo)、12月の掛金の控除が翌年分になること、ふるさと納税の上限への影響、退職金と受け取るときの「5年ルール」が「10年ルール」になったことを1級FPがまとめました。
注意点:20年未満で解約すると元本割れ
いちばん気をつけたいのは、自分の都合で解約するときです。
- 任意解約で受け取る解約手当金は、払った掛金の80〜120%で、掛金を100%以上受け取れるのは240か月(20年)以上払ってからです。20年未満で解約すると、掛金の合計を下回ります(例:月1万円で5年払って解約すると、掛金60万円に対して48万円)
- 12か月未満で解約すると、掛金は戻りません(掛け捨て)
- 廃業や退職で受け取る共済金なら、6か月以上払っていれば、掛金を下回りにくい額を受け取れます(例:月1万円で5年払って廃業すると、共済金Aは62万1,400円)
つまり、「途中でやめる」のは損ですが、「必要なときは借りる」で乗り切れば、元本割れは避けられます。掛金は、20年以上、または廃業するまで続けられる額にしておくのが安全です。
将来、法人成りしたら
個人事業主として加入したあとに法人成りしても、新しい会社の役員になって加入資格を満たしていれば、続けられます。
- 続ける手続き(同一人通算):法人成りから1年以内に手続きをすると、新しい契約を結び直して、それまでの掛金納付月数を引き継げます。将来受け取るときの退職所得の勤続年数も、最初に加入した日から数えます
- 条件:会社の常時使用する従業員が20人以下(商業・宿泊業と娯楽業以外のサービス業は5人以下)であること。弁護士法人・税理士法人などの士業法人は、業務執行社員で従業員5人以下なら入れます
- 続けられないとき:医療法人・一般社団法人・NPO法人など、直接営利を目的としない法人の役員になった場合などは、加入資格がないので続けられません。このときは共済金などを受け取ります(法人成りで加入資格がなくなったときは、2011年以降の加入なら「準共済金」で、ほぼ払った掛金の額。一括なら退職所得)
法人成りの予定があっても、加入をためらう理由にはなりにくいです。
参考:中小機構「掛金納付月数の通算(同一人通算)」、中小機構 よくあるご質問「個人事業を法人成りして、その法人の役員に就任した後に共済契約を続ける場合」
iDeCoとの比べ方
| 小規模企業共済 | iDeCo | |
|---|---|---|
| 入れる人 | 個人事業主・小さな会社の役員など | ほぼだれでも(会社員・公務員・主婦も) |
| 掛金の上限(月) | 7万円 | 自営業6.8万円(2026年12月から7.5万円。国民年金基金などと合わせて) |
| 税金 | 全額所得控除 | 全額所得控除 |
| 途中でお金が要るとき | 掛金の範囲で借りられる | 原則60歳まで引き出せない |
| 増え方 | あらかじめ決まった額。廃業で受け取る共済金Aは、年1.4%前後で増えた計算(運用の損はない) | 投資信託などで運用しだい。大きく増える可能性がある一方、減ることもある |
| 受け取るとき | 廃業・退職時、または65歳以上 | 原則60歳以上 |
※共済金Aの年1.4%前後は、中小機構の例(掛金月1万円で5〜20年)の基本共済金から計算した目安です。運用の結果に応じた付加共済金がつく年は、そのぶん増えます。
両方に入ることもできて、掛金はどちらも全額が所得控除になります。自営業なら、小規模企業共済の月7万円とiDeCoを合わせて、かなり大きな控除が使えます。
経営セーフティ共済との違い
同じ中小機構の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)も、掛金を税金の計算から引けます。ただし、しくみはかなり違います。
| 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済 | |
|---|---|---|
| 目的 | 経営者個人の退職金 | 取引先が倒産したときの資金繰り |
| だれのお金で掛けるか | 経営者個人(所得控除) | 法人・事業(法人は損金、個人事業は必要経費) |
| 掛金 | 月1,000〜70,000円 | 月5,000〜20万円(合計800万円まで) |
| 解約して受け取るお金 | 退職所得・一時所得など | 法人の益金・事業の収入(税金がかかる) |
経営セーフティ共済は、掛けたときに経費にした分が、解約して受け取るときに利益になります。税金がなくなるのではなく、先に送るしくみです。経営者個人の退職金の積み立てなら、受け取るときの税金も軽い小規模企業共済が向いています。
参考:中小機構「経営セーフティ共済の魅力について」、中小機構「経営セーフティ共済の掛金」
1級FPとして思うこと
小規模企業共済とiDeCoは、どちらも掛金が全額所得控除になりますが、目的が違います。
- 小規模企業共済:経営者の退職金。増え方は年1.4%前後と控えめですが、運用の損がなく、事業資金や生活資金が要るときは掛金の範囲で借りられます。売上の波や急な出費がつきものの個人事業・小さな会社にとって、控除を受けながら、いざというときの資金繰りにも備えられるのが強みです
- iDeCo:老後資金を運用で増やす制度。60歳まで引き出せませんが、投資信託で運用できるので、長い目で見れば大きく増える可能性があります
加入できる人なら、両方を使うのがいちばん控除を活かせます。どちらに多く配分するかは、手元の資金の余裕で決めます。売上が安定せず、いざというときの備えを厚くしたいなら小規模企業共済を多めに、生活防衛資金が十分にあって長く使わないお金があるならiDeCoを多めに、という考え方です。
ただし、20年未満の任意解約は元本割れなので、「借りてしのぐ」前提で、無理なく続けられる掛金にしておくことが大切です。また、掛金を増やすとふるさと納税の上限は下がります。
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※制度の内容は2026年10月5日時点の中小機構のページの内容です。加入資格や貸付けの条件・利率は変わることがあるので、加入・借入れの前に中小機構のページで確かめてください。